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変形性膝関節症 ・治療の受け方


変形性膝関節症

上手な治療の受け方


<変形性膝関節症とは>

60歳以上の方の4割に症状が出現

中高年の訴えで多いのが、「膝が痛い」「膝が曲がりにくい」など。

60歳以上の方の8割以上にエックス線で変形性膝関節症変化が見られ、4割に症状があると言われています。

膝関節を支えているのは、膝の周囲の筋肉や太もも前側の筋肉(大腿四頭筋)です。

しかし、筋力の低下や肥満などで膝を支えられなくなると、骨の先端にある軟骨がすり減り痛むようになります。

加齢から関節液に含まれるヒアルロン酸が減少

本来ならば骨と骨の結合部は弾力のある軟骨でおおわれていて、関節部は「関節包」という膜で包まれ中は「関節液」で満たされているため膝関節をスムースに動かすことができます。

ところが、年齢を重ねると「関節液」に含まれるヒアルロン酸の濃度や分子量が減ってきます。

ヒアルロン酸とは、粘りのある液体で関節液では潤滑油として働き軟骨の栄養分となっていますが、これが少なくなると、軟骨同士がこすれ合って炎症を起こし痛みを引き起こすことになる。

こうして起こるのが「変形性膝関節症」です。

女性がなりやすいのは、、男性よりも筋力が弱いためと考えられています。

また、肥満やO脚なども膝関節に負担をかけることになります。



<正面から見た膝のしくみ>
変形性膝関節症・上手な治療の受け方
膝蓋骨(膝のお皿)を除いた状態



<変形性膝関節症の診断・検査法は?>

問診・視診・触診・レントゲン検査を行い、骨の変形や軟骨のすり減り具合を調べて変形性膝関節症かどうかの診断を行います。

軟骨・靭帯・筋肉の状態を詳しく診たいときはMRI検査を行います。

また、血液検査・関節液検査を行う場合もあります。



<変形性膝関節症の治療法は?>

膝に負担をかけない運動療法のすすめ

変形性膝関節症と診断されたら、体重が増えすぎないように注意すること膝に負担をかける生活を避けるようにすることが必要です。

たとえば重い荷物を持たない長時間歩かない長い階段や坂道は登らないなど、膝に負担をかけない生活を心がけます。

ただ、関節を動かすことで軟骨は関節液を吸い上げ、その栄養を賄っています。

ですから、運動をしないと軟骨は栄養不足でますますすり減って変形していくことになります。

変形性膝関節症では、膝に負担をかけない運動をすることは、とても重要なことです。



<膝痛の方は、太ももの強化体操>

家の中では、イスに座ってする太ももの強化体操がおすすめです。
痛む膝に負担をかけることなく筋力を鍛えることができます。

椅子に腰かけた状態から右膝の位置が変わらないように気をつけながら、
右足のつま先を天井にむけて膝を伸ばします。

膝が地面と平行になったら、5秒程度静止。
ゆっくり膝を降ろします。同様に左足も。
膝の痛みに、膝痛(ひざ痛)体操       膝の痛みに、膝痛(ひざ痛)体操
左右それぞれ10回ずつ、1日2回(朝と夕方)、3ヶ月続けてください。

余裕のある方は、静止する時間を長くしたり足に重りをつけるとより効果的です。



変形性膝関節症には、効果的に薬を使用

膝の痛みがとれず日常生活に支障があるときは、運動療法とあわせて薬が処方されます。

痛み止めや湿布(消炎鎮痛剤)、膝にヒアルロン酸の注射をする方法などがあります。

また、サポーター、足底板、杖などを使って膝関節にかかる負担を軽くしたり関節を安定させたりして対応する場合もあります。

さらに痛みがひどいときには手術療法が適応になります。

歩きはじめや座ったときに痛みを感じるなどしたら、初期のうちに医師に相談して適切な治療を受けることが大切です。

高分子量ヒアルロン酸の関節内注射

1週間に1回ずつ5回にわたって、関節内に高分子量ヒアルロン酸の注射をします。

ヒアルロン酸は関節液や軟骨の成分ですから、不足分が補充されれば、関節の痛みは和らぎ、関節の動きはなめらかになります。
変形性膝関節症とサポーター変形性膝関節症と杖
サポーター・足底板・杖などを使って、膝関節にかかる負担を軽くしたり関節を安定させたりして対応する場合もあります。

*ヒアルロン酸の経口摂取(飲むヒアルロン酸)については医学的な根拠は明らかにされていません。



<変形性膝関節症の具体的な診察と治療>

Aさん  中程度の変形性膝関節症・薬物療法と運動療法で治療

年齢 57歳    性別 女性    職業 スーパー店員
身長 159cm  体重 69kg    BMI 27.2

7年前から両膝の関節が痛んでいましたが、次第に痛みがひどくなって仕事ができなくなり来院されました。

長時間の立ち仕事や物品の運搬ができなくなったうえ、立ち上がるときや階段の昇降時には支えが必要でした。

診察と治療

両膝に腫れ膝の動きに制限があり、膝の内側を押すと痛みがありました。 筋力は左右とも正常。

レントゲンでは、左右とも隙間が狭まり骨が硬化していたため、中程度の変形性膝関節症と診断し薬物療法と運動療法を開始しました。

薬物療法

Aさんのように比較的軽症の場合、炎症を抑え痛みをとる治療法としてはヒアルロン酸の関節内注射や消炎鎮痛剤という治療法になります。

ヒアルロン酸の関節内注射は、ステロイドと比べて副作用が少ないところがメリットです。

関節に溜まった関節液を抜いた後に、高分子ヒアルロン酸の関節内注射を5回行いました。

運動療法

症状が軽くなるまでには、ある程度の時間がかかりますが運動療法を含めた治療を行います。

1)筋力増加訓練

膝に負担がかからないように膝の曲げ伸ばしを行い、太もも前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えます。

<太もも強化体操>
変形性膝関節症・ひざ痛体操   変形性膝関節症・ひざ痛体操
2)関節可動域訓練

入浴後に、膝の曲げ伸ばしを行います。

3)有酸素運動

水中ウォーキング、水泳またはウォーキングがおすすめです。

日常の生活指導

減量をすすめ、食事や運動など日常生活に関するアドバイスを行いました。

立ち仕事のときは近くに椅子や寄りかかれる支えを用意すること、階段の昇降を減らしエレベーターやエスカレーターの利用をすること、などをすすめました。

治療の経過

初診後2週間でかなり改善し、5週間後には両膝関節痛は軽減しサポーターを装着しながらの長時間の立ち仕事にも耐えられるようになりました。

その後3ヶ月間は、2週間おきに高分子ヒアルロン酸の関節内注射を行い、痛みはほぼ消失しました。



Bさん   進行期の変形性膝関節症・人工関節全置換術

年齢 64歳    性別 女性    職業 スーパー店員
身長 152cm  体重 65kg    BMI 28.1

20年前、他の病院で右半月板切除手術を受け、それ以降徐々に右膝関節が痛むようになってきました。

消炎鎮痛剤やヒアルロン酸の関節注射などの薬物療法や足底板などの装具療法、運動療法、理学療法を行いましたが歩くと痛みが増強し杖なしでは歩けなくなりました。

じっとしていても右膝に痛みがあらわれるようになり、当科を紹介されました。

正座はできず、階段の昇り降りは手すりを使って一歩一歩です。

診察

両膝は明らかにO脚で、右膝の関節は伸展マイナス40度、屈曲115度と動きが制限されていました。

内側の膝関節を押すと痛み動かすと痛みやきしむ音がして、膝蓋骨と大腿骨の間にも痛みときしむ音がしました。

膝を内側にそらすとぐらぐらしていて歩くと膝の動揺性が明らかでした。

大腿四頭筋(太もも)に明らかな萎縮(左右の周囲径差4cm)が認められました。

エックス線画像

右膝の内側の関節の隙間はなくなり脛骨の内側の骨が欠けて、ひどく変形しています。

外側の関節や膝蓋大腿関節にも破壊がみられました。

治療の経過

変形性膝関節症と診断し、膝痛の軽減および極度に障害されている日常生活動作の改善のために人口膝関節全置換術を行いました。

骨の欠損部分には切除骨を充填して膝の変形を矯正しました。

術後2日目からは関節の動く範囲を大きくする訓練、術後3日目からは歩行訓練を始めました。

術後3週間で膝関節は0~120度動くようになり、術後1ヶ月でT字杖で歩き退院しました。

入院中および退院時の指導では、栄養士から食事の栄養指導を行いました。

運動療法は術前から大腿四頭筋の訓練を行い術後・退院後も継続して訓練するように指導しました。

術後1年が過ぎた現在、膝痛は安静時、歩行時ともほとんどなく近所へは徒歩で買い物に出かけています。

手すりがなくても階段の昇り降りができるようになりました。


<手術前>                  <手術後>
変形性膝関節症変形性膝関節症・人工関節



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